「種まき」と聞くと、土に種を埋めるだけ!と簡単なイメージがあるかもしれませんが、実際に種をまいてみると、芽が出なかったり、うまく育たなかったりと意外と難しさを感じますよね。
今回は、畑に直接種をまく「直まき」を中心に基本的な知識や、種まきのコツについて解説します。
種から育てることのメリット
苗を購入するのではなく、種から育てるメリットは、種の方が安価であることです。また、一度にまかなくても、時期をずらして種まきをすることで、長い期間作物の収穫が楽しめたり、育っていく過程が見れるため、愛着がわくのもメリットの一つです。
発芽に必要な条件
種が目を出すためには、以下の3つの条件が必要です。
- 水: 種は水を吸収することで発芽を開始します。土は常に湿った状態を保つ必要がありますが、水はけも良好でなければなりません。
- 温度: 種ごとに発芽に適した温度があります。温度が低すぎると発芽せず、高すぎると種子が死んでしまう可能性があります。購入した種の袋に記載されている「発芽適温」を確認しましょう。
- 酸素: 種は発芽するのに酸素が必要です。土は十分な通気性を持ち、酸素が供給される必要があります。種まき後に水やりをし過ぎてしまうと、種が酸欠を起こして発芽しないことがあります。
【種の種類】光を好むか嫌うか
種には光を好む「好光性種子」と、光によって発芽が抑制される「嫌光性種子」があります。これらの性質に当てはまらない種子を「中間性種子」といいます。
好光性種子
種まきの時に土を厚くかぶせすぎてしまうと、光が足らずに発芽しないことがあります。種を植え付けた後に、土をよく鎮圧すると発芽しやすくなります。
【好光性種子の例】
・レタス・ニンジン・キャベツ・カブ・シソ・コマツナなど
嫌光性種子
種まきが浅すぎると、太陽の光により発芽が抑制されてしまうため、種の2~3倍の深さになるように土をかぶせるのが一般的です。
【嫌光性種子】
・ダイコン・ネギ・トマト・ナスなど
中間性種子
種の大きさもさまざまですが、基本的には0.5㎝~1㎝の深さに種をまきます。
畑に種をまく場合の事前の準備
種を選ぶ
・育てたい植物の種類、季節や気温を考慮し、適切な種を選びましょう。野菜づくりは「適地適作」が基本です。まき時から外れた時期に種をまくと、うまく育たない、発芽しないなどのトラブルのもとになるため、住んでいる地域の気候やその年の気温も考慮して種を選びましょう。
・種子は、新鮮で、発芽率の高いものを選ぶようにしましょう。前の年の残りの種を使用してもいいですが、発芽率が下がっている場合があります。使用期限の切れた種をまくときは、多めにまくようにしましょう。
・種の購入は、ホームセンターやインターネットからでも購入できます。
畑の準備
・事前に土づくりと畝立てをしておきましょう。畝はまっすぐと平らな畝にすることで、均一に発芽しやすくなったり、凹んでいる部分に水が溜まって種が腐って発芽しないなどといったトラブルも防ぐことができます。
・点まきの場合は、事前にマルチングも行っておくことをおすすめします。マルチングは、張る手間はかかりますが、土の乾燥を防ぐ、雑草を抑えるなど、畑の管理を楽にしてくれるアイテムです。すじきやばらまきを行う予定の畑では、ビニールマルチをしてしまうと、種まきの時に外すことになります。
種まきの種類と方法
「直まき栽培」と「移植栽培」
種まきには、種を直接畑にまくか、ポットなどで育てるかによって2つの方法に分かれます。
直まき栽培
作物を育てる畑や庭の土に直接種をまくのが直まきです。
ニンジンやダイコンなどの根菜類は、植え替えを嫌う野菜であるため、畑に直接種をまく直まき栽培が向いています。
移植栽培
ポットなどで苗を育ててから植え替えを行うのが移植栽培です。
例として、春キャベツなどは、寒い時期に畑に種を直播きすると、寒くて発芽しなかったり、生長が遅くなるため、温かい場所でポットで育苗し、畑に植え付ける移植栽培をします。
すじまき
すじまきとは
畝に対して列を作って種まきをする方法。一本の畝に対して一列の種をまくことを「一条まき」、二列まくことを「二条まき」と呼びます。
【すじまきに適した野菜】
・ホウレンソウ・コマツナ・ミズナ・シュンギク・ニンジン・ゴボウなど
すじまきの手順
- 平らにした畝に種をまく溝をつくる。
支柱を横にして土に押し付けると簡単に溝をつくることができる。ない場合は、指で均一な深さになるように溝を掘ってもよい。 - 溝に種をまいていく。
種と種の間隔は1㎝が基本。購入した種の説明を読み、作物ごとに適した間隔で種をまく。 - 種をまいた溝に土をかぶせる。
- 種をまいた部分を手のひら全体を使って上から軽く抑える
- 必要に応じて水やりをする。
点まき
点まきとは
種を均等間隔に1粒~数粒ずつまく方法。
【点まきに適した野菜】
・ダイコン・ハクサイ・トウモロコシなど
点まきの手順
- 畝の中心に20~30㎝間隔で深さ1~2㎝の穴をつくる。
種を植える穴がそれぞれまっすぐに並ぶように、ヒモなどを張って目印にすると作業しやすい。
穴をあけるのは、空き瓶の底や空き缶の底を使うとうまくできる。 - 穴の中に種を5粒程度まく。
育てる作物の種の説明を読み、適切な数の種を植える。 - 穴に土をかぶせる。
- 土をかぶせた部分を手のひら全体を使って軽く押さえる。
- 必要に応じて水やりをする。
ばらまき
ばらまきとは
種を畑などに均一に散らばらせてまくこと。
【ばらまきに適した野菜】
・ホウレンソウ・コマツナなど
ばらまきの手順
- 畝の上から、均等になるようパラパラと種をまく。
- 種が隠れる程度に土をかける。
- 手のひらやクワの刃などを使って、畝の表面全体を軽く押さえる。
- 必要に応じて水やりをする。
種まきのコツと注意点
畝を平らにして種まきの溝の深さを一定にする
種まきはまき溝の深さを一定にすることがポイントです。溝が深すぎると水が溜まって種が腐ってしまったり、 土を厚くかぶせすぎたり、深く植えてしまうと、芽が地上に出るのに時間がかかって、育ちが悪くなることがあります。
逆に浅すぎる場合は乾燥してしまい発芽が揃わないことがあります。
こうした原因で、発芽した植物の成長にばらつきがあれば、弱い身体の植物の一部が枯れてしまうこともあります。そのため、発芽を揃えるためには畝の表面を平らにし、種をまく溝を一定にすることがポイントです。
一定の深さの撒き溝を作るには太めの支柱使うことがおすすめです。太さ15mmの支柱を畝に均等に押し付けくぼみを作ると、種まきの溝がそろい、発芽もそろいやすくなります。
種をまいたあとに土を鎮圧する
種をまき、土をかぶせたら、上から手で抑えましょう。 これを鎮圧といいます。鎮圧して土を密着させると「毛細管現象」といって地下の水分が上がり、種の周囲に土がしっとり湿めった状態になります。鎮圧したあとに、土に適度な湿り気が出てきた場合は、水やりは不要です。種まき後に水やりをし過ぎると、種が水に溺れて酸欠を起こし、腐ってしまうことがあります。
水のやりすぎに注意する
種まきの後は、土を適度に湿った状態に保ちましょう。ただし、水を与えすぎると、種子が腐ってしまう可能性があります。特にマメ科の植物(エダマメやインゲンなど)の種は豆なので、水分を含み腐りやすい特徴があります。
適地適作を心がける
種子ごとに、発芽に適した時期があります。適した時期に播種することで、発芽率を高めることができます。地域の気候や天候なども考慮しましょう。
適切な方法で種まきをする
すじまき、点まき、ばらきなど、さまざまなたねまきの方法があります。また、種をまく深さも作物によってことなります。作物に合わせた方法で種まきを行いましょう。
発芽しない原因と対策
種をまいても残念ながら発芽しないこともあります。発芽しない原因は1つではなく、複数の要因が重なっていることが多いです。発芽しない場合は、以下のことがないか確認し、対策をする必要があります。
発芽しない原因
温度
- 種子ごとに、発芽に適した温度があります。
- 温度が低すぎると発芽せず、高すぎると種子が死んでしまう可能性があります。
- 「適地適作」という言葉があるように、それぞれの植物にあった環境でないと、発芽しないか、発芽しても枯れてしまうこともあります。
水分
- 水分不足では発芽できません。
- 逆に水を与えすぎると、種が水に溺れてしまい、酸欠で種が腐ってしまう可能性があります。
光
- 好光性種子は、発芽に光を必要とします。
- 嫌光性種子は、光を必要とせず、むしろ光を当てると発芽率が低下します。
- 種の性質にあった環境にすることが必要です。
土の状態
- 土が硬すぎると、根が張れずに発芽できません。
- 土壌の酸性度が適切ではない場合も、発芽しないことがあります。
- 団粒構造の土を目指して土づくりを行いましょう。
種の質
- 古い種や、発芽率の低い種は発芽しないことがあります。
- 種が病害虫に侵されている場合も、発芽しないことがあります。
発芽日数が足りていない
- 発芽日数は5~7日であることが多いですが、一部の作物は発芽日数にばらつきがあります。例としてある品種のピーマンの発芽日数は6~21日です。購入した種の説明を確認しましょう。
トリなどの動物に食べられる
- 特に、マメ科の野菜(エダマメやインゲンなど)は、鳥に種を食べられてしまうことがあります。
不織布のべた掛けをすることで予防できます。
種まきの方法が間違っている
- 種まきの方法が間違っている場合も、発芽しないことがあります。種まきの時期や種をまく深さが間違っていると、発芽しないことがあります。
発芽しない場合の対策
- 種ごとに、適した温度、水分、光、土壌条件を確認する。
- 新鮮で発芽率の高い種を使用する。
- 適切な方法で種まきをする。
- 鳥の被害を予防する。
- 種まきの時期が間に合えば、早めにまき直しを検討する。
余った種の保管方法
購入した種の袋を確認すると、種の有効期限が記載されています。種も生きているので、時間がたつにつれて質が悪くなります。質が悪くなると、発芽率も悪くなります。そのため、種を保存するためには、種の質を落とさないことが重要です。
自然では、種は冬の間土の中で眠っています。そして春になると目を出します。このことから、暗くて寒い状態を作り出すことが種を質を落とさずに保存するポイントといえます。
基本的なポイント
- 密閉容器に入れる: 種は湿気の影響を受けやすいので、密閉容器に入れて保管しましょう。
- 冷暗所に保管する: 種は温度と光の影響を受けやすいので、冷暗所に保管しましょう。
- 乾燥剤を入れる: 乾燥剤を入れることで、湿度を低く保ち、カビの発生を防ぐことができます。
具体的な方法
- 小分けにする: 種を種類ごとに小分けにして、密閉容器に入れましょう。
- ラベルを貼る: ラベルに種の種類、使用期限などを記入しておきましょう。
- 冷蔵庫で保管する: 冷蔵庫や冷凍庫で保管することで、発芽率を長持ちさせることができます。
注意点
- 冷蔵庫から取り出す際は、結露に注意する: 冷蔵庫から取り出した種子は、すぐに開封せず、室温になるまで放置してから開封しましょう。
- 長期間保管する場合は、定期的に状態を確認する: 長期間保管する場合は、定期的に種子の状態を確認し、カビが生えていないか、虫食いになっていないかなどをチェックしましょう。