家庭菜園で頭を悩ませる要因の一つには、次から次へと生えてくる雑草ではないでしょうか。気温の上昇に伴って、野菜よりも元気に伸びて増えてしまう雑草は何とか対策をしたものです。また、せっかく生えてくる雑草を野菜づくりに活用できたらいいですよね!
この記事では、自宅の庭や市民農園などの畑でできる雑草対策と、雑草を活用した堆肥づくりの方法について解説します。
雑草はなぜ生えてくるのか
雑草とは:人が栽培していない、または望まない場所に生えている植物のこと。
雑草は、種、水、土、空気、光、温度があれば、ほとんどの場所で生えてくることができます。風に乗って運ばれた種や、耕すことで土の表面に出てきた種が光を浴び、水分を得ると芽を出します。雑草は、強い生命力を持っているので、厳しい環境でも生きていけます。また、繁殖力が強いので、すぐにたくさんの種をまき散らします。そのため、抜いても抜いても生えてこなくなることはほぼありません。
雑草の特徴
- 生長が早い
- 再生力が強い
- 種を付けるのが早い
- 大量の種をつくる
雑草を放置しているとどうなるか
雑草は何となく抜いたほうがいいというのは知っていると思いますが、雑草を抜かずに放置していた場合、作物に与及ぼす影響について解説します。
栄養分を奪われる
雑草は野菜と同じように、土壌中の栄養分を吸収します。特に、生育初期の野菜は、雑草に比べて栄養分の吸収力が弱いため、雑草が生えていると、必要な栄養分が不足し、うまく育たなくなる可能性があります。
日当たりが悪くなる
雑草は野菜よりも背が高くなることが多いため、雑草によって、太陽の光が遮られて日当たりが悪くなります。植物は太陽の光によって光合成を行いますが、光合成に必要な光が不足すると、野菜の生育が悪くなります。
通気性が悪くなる
雑草がたくさん生えることによって、通気性が悪くなり、ジメジメします。ジメジメした環境は害虫やカビの原因になります。
水分を奪われる
雑草は野菜と同じように、土の中の水分を吸収します。特に乾燥した時期には、水分不足によって野菜の生育が阻害される可能性があります。
病気や害虫の被害を受けやすくなる
雑草は、病害虫の隠れ家や越冬場所になることがあります。雑草が生えていると、野菜に病害虫が発生しやすくなります。
周囲とのトラブル
特に市民農園や貸し畑を利用している場合、雑草が隣の畑まで伸びてしまったり、病害虫の被害が隣の畑にまで及んだりすることで、トラブルの原因になる可能性があります。
雑草対策
雑草は生やしてしまうと、どんどん生長し、さらに種も落とすため、雑草を生やさないこと、つまり予防することが重要です。雑草の予防方法と生えてしまったときの対処法を解説します。
雑草の予防
土を健康な状態に保つ
畑の土を作物が育ちやすい「よい土」にすることで、雑草に負けない作物が育ちます。作物が元気に育てば、雑草が作物を超えて生長することを抑えることができます。畑の土を作物が育ちやすいといわれる「団粒構造」にしていくことが重要です。団粒構造についてはこちらの記事で解説していますので、ご覧ください。
土を適切なpHにする
一般的に野菜などの作物を育てるために適しているpHは6.5(弱酸性)といわれています。雑草はpH5以下で出やすくなるといわれています。日本は雨が多い地域であり、その雨(酸性雨)によって土は酸性に傾きやすくなります。土を作物が育ちやすい酸度に調整するために、適度に酸度を調整する資材(石灰など)を畑に投入する必要があります。
マルチングを行う
マルチングとは、土の表面をビニール資材や有機物で覆うことをいいます。マルチングによって、土の表面に太陽の光が降り注ぐのを防ぎ、雑草の種の発芽を抑制する効果があります。マルチングは雑草の予防以外にも、土の保湿や保温、病害虫の予防など、さまざまな効果があるため、使用をおすすめします。初心者さんは、黒のビニールマルチがおすすめです。
防草シートの利用
防草シートとは、太陽の光を遮断し、雑草の光合成を抑えることで雑草の発生を抑制するシートのことです。前項で説明したマルチングシートは、作物を育てている畝に対して行う雑草対策ですが、この防草シートは、畝と畝の間などの通路に行う雑草対策です。シートを敷くだけで、雑草は生えるのを抑えてくれるため、手軽にできる予防法です。
雑草が生えてしまった後の対処
雑草をこまめに除草する
雑草が生えてきたら、こまめに除草することで、雑草の種を土に落とさずに済みます。雑草が小さいうちは根を深くまで張っていないため、草むしりも楽です。
根をあえて残す方法もある
雑草を根から抜くのではなく、地上面のギリギリで刈り取る方法もあります。雑草の根を残しておくことで、土の肥料になることや、残した雑草の根が枯れると、その部分が空洞になるため、土が自然に耕された状態になるというメリットもあります。
注意点としては、市民農園などの畑を借りて利用している場合は、雑草の管理についてルールが決められている施設もあるため注意が必要です。
また、雑草にはいくつか種類があり、そのうちの地下茎を持つ雑草は、根を残していると、その根の部分(地下茎)から再び雑草が生えてきてしまうため、根元から除去する必要があります。イメージしやすい地下茎の植物は「竹」です。畑でよく見かける地下茎をもつ雑草には、スギナ、ドクダミ、カタバミ、クローバー、チガヤ、セイタカアワダチソウ、ススキなどがあります。
やむを得ない場合は除草剤の使用を検討する
市民農園や貸し畑を利用している方は、除草剤の使用が可能か農園に確認するようにしましょう。家庭菜園を行っている方は、農薬に頼らずに作物を育てることがおすすめですが、やむを得ない場合は、除草剤の使用を検討することもあります。
畑で雑草を活用する方法
あえて根を残す
草むしりは、根から抜くのが基本ですが、一部の雑草では、地面のキワを刈り取って、根を残すことがあります。これは、雑草の根には栄養分も含まれるため、土の肥料にあることと、張っていた根が土の中で枯れると、その部分に空洞ができるため、通気性がよくなり土がふかふかになります。これは、自然に土が耕されていることになるため、こうした活用法があります。
雑草マルチとして活用する
マルチングとは、土の表面を覆うことで、土の保温、保湿や雑草の抑制、病害虫の予防などを目的に行われます。このマルチングの材料として、刈り取った草を利用することがあり、草マルチともよばれます。草マルチは有機物であるため、微生物のエサにもなり、「よい土」になる手助けをしてくれます。
雑草を堆肥として活用する
堆肥とは、有機物を微生物によって分解させた肥料です。雑草も堆肥の材料として利用することができます。畑でできる雑草を使った簡単な堆肥づくりは、通路などの空きスペースに雑草を埋めておくことです。種を持った雑草は畑の外に出すことが基本ですが、生えたばかりの雑草であれば、穴に埋めておくと、夏場では1か月程度、冬場は2~3か月程度で雑草が堆肥になっています。注意点として、まれに、雑草が穴から再び生えてくることがあるため、その時は処理しましょう。
雑草はただの「悪者」ではない
雑草は、「抜くことが基本」という考え方が当たり前になっていますが、一部の雑草をあえて残して、雑草とも共生していくという考え方もあります。
雑草の一部を生きたまま残すことで、土の表面を覆い、乾燥を防いだり、一部の雑草の根を残すことで自然に根で土を耕す働きになったりと、悪いことばかりではありません。
雑草のそんな一面もあるんだということを頭の片隅に置いて、雑草と向き合っていくことが大切だと思います。
市民農園や貸し農園では、特に施設を利用するルールとして草むしりを怠らないことが決められているところが多いです。
利用する施設や環境に合わせて、雑草の対策や利用をしていくようにしましょう。