【家庭菜園の基本】土と植物の関係について解説!

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家庭菜園を始めると、難しい言葉がたくさん出てきて、心が折れそうになりませんか?

「団粒構造」「保肥力」「土壌微生物」…。

私も家庭菜園をはじめたての頃は知らないことばかりでした。ですが、一つずつ勉強していくと、「点」として学んだことがつながって、やがて大きな知識の「円」ができます。

家庭菜園は奥が深く、学べば学ぶほどおもしもいです。

今回は家庭菜園でも特に奥が深い「土と植物の関係」について解説します。

目次

畑の土を構成するもの

畑の土はおもに5つの物質で構成されています。

①無機物

無機物は、粘土、シルト、砂に分類されます。これらは、いずれももとは岩石で風化によって細かく砕かれたものです。無機物はその大きさによって、砂とシルトに分類さえます。そのうち粘土は風化の過程で溶け出した 成分(ケイ酸やアルミニウム)が再結晶化した微細な粒子のことをいいます。

粘土:0.002mm以下の粒。マイナス電荷を持ちマグネシウムやカリウムなどの陽イオンを電気的に吸収する。
土の団粒化では接着剤の働きをする。

シルト:0.002mmから0.02mmの粒。岩石が風化して細かくなったもの。組成は岩石と同じ。大きさは砂と粘土の中間で土の塊を作る泥のことをいう。

砂:0.02からで2mmの粒。岩石が風化して細かくなった粒。組成は岩石と同じ。これより大きいものはれき(石ころ)になる。

②有機物

・植物の根:生きている根と枯れている根。

・土壌生物の遺骸:土の中の微生物も含む。

腐植:有機物が分解された後にできる黒っぽい物質のこと。

③土壌生物

・土壌微生物:バクテリア、菌類など。

・土壌動物:ダニ、ミミズなど。

④空気

特に、団粒構造の土であれば、団粒と団粒の隙間に空気が存在する。そのおかげで植物が呼吸でき、根も伸ばすことができる。空気が豊富な土は、酸素が好きな土壌生物も活発になる。

⑤水

団粒構造の土は、降った雨が土の粒に染み込み、水分をキープしている。 植物は根から水分を吸って育ち土壌生物も水分を得て活動できる。

土と植物の関係

土と植物は、互いに密接な関係を持ち、植物の生育にとって不可欠な存在です。

土は、植物と次のような関わりがあります。

水を蓄え供給する

植物は、光合成や細胞分裂などの生命活動に必要な水を土から吸収します。土壌には、水を引き留める保水性があり、植物が必要な時に利用できるように水を蓄えます。

養分を蓄え供給する

植物は、成長に必要な窒素、リン、カリウムなどの養分を土から吸収します。土には、これらの養分を蓄える保肥性があり、植物が必要な時に利用できるように養分を蓄えます。

酸素を蓄え供給する

植物は、根から酸素を吸収して呼吸を行います。土壌には、小さな空間があり、ここに空気が蓄えられます。

植物を支える

植物は、根を土に張ることで体を支えます。土壌には、根を固定し支える働きがあり、植物が倒れるのを防ぎます。

微生物

土壌には、植物の生育に役立つ微生物が数多く存在します。これらの微生物は、有機物の分解をすることで、養分を植物が吸収できる形にします。微生物のフンや死骸も栄養になるなど、土の中の栄養分を循環させる役割があります。

よい土の3つ条件


植物が好むよい土は、言い換えれば根の生育に適した環境を持つ土であるといえます。

植物が必要とする時に水分や養分、空気を供給できる土作りが基本となります。

よい土の3つの条件

団粒構造

団粒構造とは、土壌粒子が小さな団粒と呼ばれる塊状に集まった構造です。

ほとんどの植物は水浸しの状態では呼吸ができず、酸素不足になってしまいます。水はけを良くするために、土の粒と粒の隙間が必要になります。隙間があると空気が流れ込み、同時に余分な水の排出路にもなります。

これらの、「水はけ」「水持ち」「通気性」に優れた土を団粒構造の土と呼んでいます。

作物を健康的に育てるためには、団粒構造を目指していくことが需要です。

適度な有機物と微生物の働き

有機物は、水持ちをよくし、保肥性、団粒構造の形成に役立ちます。また、有機物は土壌中の微生物の活動を活性化させ、土壌の健康状態を維持します。

適度な酸度

土壌の酸性度(pH)は、植物の生育に影響を与えます。ほとんどの植物は、pH5.5~7.0程度の弱酸性の土壌でよく育ちます。

いい土の要素「三相」について

土の物理的にみると、「固相」「液相」「気相」という3つの要素で構成されています。

1. 固相:砂、シルト、粘土などの鉱物と、土壌生物や土壌微生物、落ち葉や枯草、動物のふんや死骸などの有機物から構成。固相には養分も含まれている。養分が植物の根に吸収されるためには、バランスのよい水分(液相)と空気(気相)が含まれている必要がある。

2. 液相:土壌中の水から構成。水は植物の生育にとって不可欠な要素であり、土の中の養分を根に吸収させるときに必要。

3. 気相:土の中に含まれる空気。植物の根も呼吸をするため、酸素が含まれた空気が必要。

これらの要素が適切な割合で存在することで、作物が元気に育つ土になります。

一般的に作物が生育しやすい土の三相の割合は、固相40%・液相30%・気相30%です。

気相の割合が高いと、乾きやすく保肥力が少ない土、固相と液相の割合が高いと水はけが悪い土になります。

・土は「固相」「液相」「気相」という3つの要素で構成される。
・作物がよく育つためには、固相40%・液相30%・気相30%が理想。
・気相が多いと乾燥し保肥力が低下する。
・固相と液相が多いと水はけの悪い土になる。

次に解説する「団粒構造の土」に近づけることで、この三相のバランスが整う。逆に、三相のバランスが整った土は、団粒構造の土であるともいえる

よい土にするために必要なこと

よい土を目指すためには、土の「物理性」「化学性」「生物性」の3つにわけて考えると対処がしやすくなります。

【土の物理性】水はけ水持ち通気性がいい土にすること

土の物理性を改善するには団粒構造の土を作ることが大切。

団粒構造の重要性

団粒構造の土とは、土の粒子がくっついて、大小の団子状の塊になった土のことをいいます。団子と団子の間には隙間がたくさんあり、空気をたっぷり含むので土は軽くてフカフカです。通気性と水はけの良さはこの隙間によってできています。

【団粒構造が水はけ・水持ち・通気性がよくなる理由】
一つの団粒を拡大してみると、それぞれが小さな粒からできており、小さな団粒もさらに小さな団粒からできています。それぞれ団粒は大きさの違う砂や粘土からできています。団粒と団粒の間は広さは色々あり、隙間が狭ければ水を蓄える働きをします。広ければ水は流れて、そのあと新鮮な空気が取り込まれます。 このように土は団粒化させることで、水はけ水持ち、通気性が改善します。

団粒構造の土か確かめる方法

土を握って確かめる方法】
・適度に湿った土を片手に適量のせる。
・その土を軽く握る。
・握った土を軽く指で押す。
→団粒構造であれば、握ると塊になり指でほぐすと程よく崩れるのが特徴です。

土の物理性を改善する方法

  • 有機物の施肥:有機物を土に施すことで、土はふかふかになり団粒構造を形成し、通気性、水持ち、水はけを改善することができます。
  • 適切に耕す: 畑を耕すことは、土の通気性をよくします。ただし、過剰に耕してしまうと、団粒構造をこわしてしまい土の健康状態を悪化させるため、注意が必要です。
  • マルチング: 土の表面を有機物やシートマルチで覆うことで、土が雨で硬く締まったり、土の有機物や微生物が外に流れ出るのを防ぐ役割があります。
  • 緑肥の栽培:緑肥とは、土を健康にするために育てる作物のことです。
    緑肥は、土に有機物を供給し、土壌中の微生物活動を活発にする効果があります。
    緑肥を栽培することで、団粒構造が作られるのを促進することができます。
  • 土壌微生物の活性化: 土壌微生物は、有機物を分解し、粘着物質を分泌することで、団粒構造をつくります。
    土壌微生物の活性化には、有機物の施用や適切なに土を耕し、土に酸素を供給することが有効です。
  • 適切な水やり 適切な水やりは、土壌中の水分量を調整し、団粒構造を維持するのに役立ちます。
    過度な乾燥や過湿は、団粒構造を破壊してしまう可能性があります。

【土の化学性】pHと保肥力を適切にすること

土の化学性は大きく分けて酸度を表す「pH」と、保肥力を表す「CEC」に分けて考える。

pHについて

・pHは、酸性・中性・アルカリ性を示す値である。
・多くの野菜が育ちやすいpH5.5~7.0であるが日本の土は雨が多く、酸性雨によって土が酸性に傾きやすい。

pHとは、酸性、中性、アルカリ性の程度を示す値で化学の分野では7を中性と定義します。

ほとんどの植物がよく育つ土のpHは、pH5.5〜7.0と言われています。

野菜ごとに適した土のpHを以下の表にまとめています。

pH野菜
6.5~7.0
微酸性~
中性
・エンドウ
・ホウレンソウ
6.0~6.5
微酸性
・アスパラガス
・インゲン
・エダマメ
・カボチャ
・カリフラワー
・キュウリ
・シュンギク
・スイカ
・スイートコーン
・トマト
・ニラ
・ナス
・ネギ
・ハクサイ
・ピーマン
・メロン
・レタス
・ラッカセイ
5.5~6.5
弱酸性~
微酸性
・イチゴ
・キャベツ
・コマツナ
・サラダナ
・タマネギ
・ダイコン
・ニンジン
5.5~6.0
弱酸性
・サツマイモ
・ショウガ
・ラッキョウ
・ニンニク
・ジャガイモ
野菜ごとの適した土のpH 【参考文献】土と肥料の作り方・使い方

植物の根が順調に伸びるためには、土のpHと養分(無機栄養素)のバランスが適切である必要があります。

降雨量が多い 日本では雨水によって土の中のカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ性のミネラルが地下へ流れてしまうことと、雨が酸性(酸性雨)であることから日本の土は概ねpH5〜6の酸性が強い土になっているといわれています。

酸性土壌に含まれるアルミニウムイオンは植物の根に大きなダメージを与えるので、酸度を適切に保つ必要があります。

土のpHを調整する方法

・土のpHを知るために、事前にpH測定器などを利用するのことが望ましい。
・土のpHは、アルカリ性の資材である「石灰」を使用し、酸度調整をする。

日本の土のpHは雨によって酸性に傾きやすい特徴があると解説しましたが、市民農園や貸し畑では、前の人が土の酸度を調整する資材を使っていた可能性があります。

土はアルカリ性に傾きすぎても、土が硬くなったり、作物が栄養素を吸収できないなどのトラブルにもなるため、土の適切な酸度を保つことが重要です。しかし、前の利用者がどんな資材を使って、どんな作物を育てたのか知ることは困難です。

そこで、土のpHを測定するpH試験紙や、pH測定器を使用すると、手軽に土の酸度を知ることができます。

pH測定器を購入するのに抵抗がある方は、石灰などの酸度調整資材をまずは入れてみて、実際に作物を育て、順調に生長するか観察しましょう。例として、酸性土壌に弱いホウレンソウでは、土が酸性に傾いていると、葉が黄色く変色し、生長がとまることがあります。栄養分や水はけや水持ち、通気性、天候、病害虫やその他の要素が適切であってもこのような症状が出た場合には、土壌のpHの調整が必要だと判断できます。

土のpHを改善するためには、作物の苗の植え付けや種まきの前の「土づくり」の段階でpH調整資材を投入する必要があります。作物を植え付けてから使用できる資材は限られるため、注意しましょう。

基本的には、畑の土は酸性に偏っていることがほとんどです。そのため、アルカリ性の資材を畑に投入し、土の酸度を調整します。畑の土に投入するアルカリ性の資材の代表は、「石灰」です。

代表的な石灰資材】

  • 消石灰:アルカリ性がとても強く、最も効果が速いですが、化学反応でアンモニアガスが発生したり、皮膚がかぶれるなど扱いが難しい。
  • 苦土石灰:効果は比較的遅いですが、扱いやすく、マグネシウムも含まれる。
  • 有機石灰:効果は最も遅いですが、土壌の団粒構造を改善する。

【石灰を過剰に使用することはよくない】

むやみに石灰をしようしてしまうと、土がアルカリ性に傾きすぎてしまうことがあります。すると、土が硬くなる、野菜が本来吸収できるはずの栄養分を吸収できなくなるなどのトラブルのもとにもなります。
酸性の土をアルカリ性の資材を使って調整することは、割と一般的に行われていますが、アルカリ性の土を酸性にもどすことは容易ではないので、石灰の投入量は慎重に検討しましょう

CEC

CECは土が栄養分を保持することができる力のこと。腐植や粘土の多い土ではCECが高くなる。

CEC(保肥力)とは

植物は必要な時に必要な量の養分を根から吸収することで生長します。

土には「保肥力」という養分を土に蓄える力があります。

土の中に粘土や腐植(土の中で動植物が分解されてできる黒褐色の有機物)が多いと保肥力が高まり、作物は安定的に生長します。

肥料として土に施される養分のうち、チッソ、カリ、カルシウム、マグネシウムはいずれも水に溶けると陽イオンとなります。
そのため、マイナス電荷(陰電荷)を帯びている粘土や腐植に吸着されることになり、雨水や灌水によっても養分が流されにくくなります。つまり土の粘土や腐植(陰電荷量)が多いほど保肥力が大きいわけです。

これは「陽イオン交換容量」という値で示されます。 英語の頭文字から「CEC」と言います。

土の保肥力を改善する方法

【粘土質の土の場合】

粘土質の土では、すでに栄養分を吸着する働きのある粘土が豊富であるため、栄養分としての肥料はさほど畑に投入しなくても野菜は育ちます。しかし、粘土質の畑は、土が硬く締まりやすくて、水はけと通気性が悪い特徴があります。保肥力とは少し異なりますが、もみ殻などを投入し、土をふかふかにすることで、団粒構造の土をつくることができます。

【団粒構造の土の場合】

適度な保肥力があるので、引き続きよい土になるよう、有機物の施肥を適宜行うことが大切です。

【砂質の土の場合】

砂質の土は、粘土が少ないことが特徴。また、サラサラとした砂質の土は、水はけがいい分、水とともに栄養分も流れ出てしまいます。そのため、保肥力が低いことが特徴です。

砂質の土は、通気性がいい分、酸素が豊富で微生物も活発になることから、有機物の分解も早いです。

このことから、土の団粒化をするのが一番難しい砂質になります。

砂質の畑の保肥力を上げるポイントは、時間をかけて微生物が有機物を分解させることで、長く肥料を効かせることがてきるため、バーク(樹皮)堆肥などの分解に時間がかかる有機物を施肥することが保肥力(CEC)を上げるポイントです。

【土の生物性】土の中の生物を豊富にすること

土の生物性とは、土壌中に生息する生物の種類、数、活性などを指します。

土壌生物は、目に見える動物から、顕微鏡でしか見えない微生物まで、様々な種類が存在します。これらの生物は、土壌の物理性、化学性、生物性を向上させ、植物の生育にとって重要な役割を果たします。

土壌生物の役割

  • 有機物の分解: 土の中の生物は、植物や動物の遺骸などの有機物を分解し、無機化して、植物が吸収できる栄養素にします。
  • 土壌構造の形成: 土壌生物は、有機物を分解して粘土粒子と結合し、団粒構造を形成します。団粒構造は、土壌の通気性、水はけ、水持ちをよくします。
  • 病害虫の抑制: 土壌生物の中には、病原菌や害虫を食べる益虫が存在します。益虫は、病害虫の発生を抑制し、作物の収穫量を増やすのに役立ちます。
  • 土壌の肥沃度: 土壌生物は、有機物を分解して、植物が利用できる窒素、リン、カリウムなどの栄養素を供給します。

土の生物性を高める方法

  • 有機物を施す: 有機物は、土壌生物のエサとなり、土壌生物数を増加させることができます。
  • 輪作: 同じ場所で同じ作物を連続して栽培すると、土壌生物の多様性が低下します。輪作は、異なる種類の作物を順番に栽培することで、土壌生物の多様性を維持することができます。
  • 適切に耕す: 土を耕すことは、土の通気性を改善し、土壌生物を活性化させます。ただし、過剰に耕すと、団粒構造を壊したり、土壌生物が作り上げた環境を破壊するため、注意が必要です。
  • 有機マルチ: 土の表面を有機マルチで覆うことで、土の有機物や微生物が流れ出るのを防ぎます。また、有機マルチは微生物のエサにもなるため、微生物が活発になります。
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