おいしい野菜を育てるためには、「土づくり」が大切ということを聞いたことはありませんか?調べてみても難しいことばばかりで、家庭菜園をはじめたばかりの人は挫折してしまいそうになりますよね。今回は、土づくりの手順や方法を詳しくまとめました。
野菜づくりに良い土とは
良い土とは、水はけ、水持ちがよく、有機物(落ち葉や堆肥など)を多く含んでいる土です。
野菜づくりに適している土は、『団粒構造の土』や『壌土』とよばれることもあります。
土の中には、砂のようにサラサラした軽い土から、粘土のように水を含んで重い土までさまざまな土がありますが、その中間である『壌土』と呼ばれる土が、多くの種類の野菜づくりに適した土であるといえます。
健康でおいしい野菜を育てるためには、良い土であることが重要です!
良い土の条件には、以下の8点があります。
- 植物の根が十分に張れる
- 通気性がよい
- 水はけがよい
- 水持ちがよい
- 肥料持ちがよい
- 適切な酸度である
- 清潔である
- 微生物が多く含まれている
土づくりをする上で特に意識したいこと
フカフカの土である「団粒構造」になることを目指す
団粒構造とは、土壌粒子が小さな団粒と呼ばれる塊状に集まった構造です。ほとんどの植物は水浸しの状態では呼吸ができず、酸素不足になってしまいます。水はけを良くするために、土の粒と粒の隙間が必要になります。隙間があると空気が流れ込み、同時に余分な水の排出路にもなります。これらの、「水はけ」「水持ち」「通気性」に優れた土を団粒構造の土と呼んでいます。
作物を健康的に育てるためには、団粒構造を目指していくことが重要です。
有機物を土に与え、微生物の働きをよくする
土の中には、肉眼では見ることのできないような小さい生物(微生物)がたくさん住んでいます。この微生物は、土の中にある植物の根や葉や土の動物の死骸などの有機物を分解します。微生物が分解したものを、植物が栄養分として吸収することで、野菜はより健康に育ちます。
また、微生物が有機物を分解する過程でネバネバとした粘液を出し、その粘液で土は適度な粒の集まりができます。これが団粒構造です。
こうした理由から、土の中の有機物を豊富にすることで、微生物のエサが増え、微生物が有機物を分解し、団粒構造の土ができます。団粒構造の土は、水はけや水持ちがよく、肥料持ちにも優れ、野菜が喜ぶ土にすることができます。
土を適度な酸度に保つ
土壌の酸性度(pH)は、植物の生育に影響を与えます。酸度とは、酸性、中性、アルカリ性などを示すもので、pHで表記されます。
ほとんどの植物は、pH5.5~7.0程度の弱酸性の土壌でよく育ちます。
しかし、日本は比較的雨が多い地域であり、空気中の二酸化炭素が雨に溶け込むことによって、pH5.6程度の雨が地上に降り注ぎます。畑の土や庭の土も、こうした酸性雨の影響を受け、一般的に土は酸性に傾いていることがほとんどです。
こうした影響もあり、家庭菜園では、土が適切な酸度になるよう、アルカリ性に傾けるための資材(石灰資材)を使うことがあります。ただし、酸性雨が降るからといって、過剰にアルカリ性の資材を使うと、土がアルカリ性に傾きすぎてしまい、野菜が育たなくなってしまうことがあるため、注意が必要です。
家庭菜園での土づくりの手順
土づくりは大まかに4つの工程にわかれます。
- 畑を耕す(植え付けや種まきの3~4週間前)
- 堆肥を入れる(植え付けや種まきの3~4週間前)
- 石灰資材を入れる(堆肥の1週間後)
- 肥料を入れる(石灰資材の1週間後)
土づくりは、畑の土の状態や、育てる作物、使用する資材によっても必要になる場合や不要になる場合もあるので、ここでは一般的な土づくりについて解説します。
①畑を耕す
畑を耕す目的
- 土を深くまでやわらかくし、酸素を取り入れる。
- 土の塊を砕いておくことで、この後の堆肥や肥料を施すときに土の粒子となじみやすくする。
- 作土層(普段から耕して柔らかくしている層のこと)を深くやわらかくし、作物の根が生長しやすくなる。
- 土の水はけをよくする。
土を耕す前準備
- 草むしり
- 大きな石やゴミを拾う
- 周囲に日陰をつくる木などが伸びていたら切って日当たりを確保する
畑の耕し方は土質ごとに異なる
畑の土の質は、「粘土質」「壌土」「砂質」の3つに分かれ、畑の耕し方も土の質によって異なります。
簡単に言うと、粘土質は、栄養分が豊富に含まれているという利点がありますが、水はけが悪く、根腐れしやすいという特徴があります。砂質はサラサラとした土で、水持ちが悪い・乾燥しやすいなどの特徴があります。壌土は、砂質と粘土質の中間の特徴を持っており、水はけ、水持ちもよく、栄養分に富んだ土で、多くの野菜が育ちやすい土であるという特徴があります。
自分が野菜づくりをしている畑や庭の土が、どんな性質の土なのかは簡単に調べることができます!
以下の方法を試してみてください。
【土質を調べる手順】
①適度な湿り気のある土をこよりをつくるイメージで指でこねる
②その土がどのような状態になったか観察する
・粘土質→ こねると細い「こより」になる
・壌土→こねると太い棒になる
・砂質→こねてもバラバラになる
3つの土質ごとの詳しい土づくりの方法はこちら☟の記事にまとめたので、ご覧ください。
砂質の畑の耕し方
砂質の畑は、初回に堆肥を投入するときに軽く混ぜる程度に耕しますが、その後は耕さないことが基本
【砂質の畑を耕さないほうがいい理由】
・砂質の畑は、微生物による有機物の分解速度が速いため、耕すことで、微生物に酸素を与えさらに分解速度を速めてしまい、土の中の有機物を分解してできた物質である「腐植(ふしょく)」の量が少なくなってしまいます。
・腐植は、土の水持ちや肥料持ち、団粒化に欠かせない物質です。
・砂質の畑は、水はけがよい分、保水力や保肥力が低く、団粒化しにくい特徴があるため、腐植の存在は大事です。
壌土・粘土質の畑の耕し方
耕すことで通気性や水はけ・水持ちをよくし、微生物が活発にして団粒化を目指す
育てる作物にもよりますが、おおよその野菜は、深さ20㎝程度の土がふかふかになるように耕します。
土が硬い場合は、クワが奥まで入らないため、剣先スコップを使って地面を掘り上げます。
剣先スコップを地面に垂直にさすように立て、スコップのふちに片足をかけて体重をかけます。スコップが地面に突き刺さったら、てこの原理を使って土を掘り上げます。すると、土の塊が掘り上げられるので、その塊をスコップかクワを使って細かく砕きます。
この作業を畝を立てる部分を中心に行います。ある程度耕したところで、堆肥などの資材を投入します。
②堆肥を入れる
堆肥は苗の植え付けの3~4週間前に済ませる(耕す日と同時でもOK!)
畑を耕したら、次に堆肥を投入します。畑を耕した日と同じ日に行っても問題ありません。この作業は、苗や種の植え付けを行う3~4週間前に済ませておく必要があります。
理由は、堆肥はそのままでは植物が栄養分として吸収できる形ではなく、土の中の微生物によって、植物が吸収できる栄養に分解する必要があるため、植え付けまでに一定の期間が必要になります。
また、堆肥などの有機物は微生物のエサになります。微生物が有機物を分解したときにでるフンや分泌物が細かい土の粒子をくっつけるための『のり』の役割を果たし、団粒構造の土ができます。団粒構造の土は、野菜が健康に育つために重要になります。
堆肥の種類
・植物性堆肥(フカフカ堆肥):腐葉土・バークなど
・動物性堆肥(肥料分が多い):牛ふん・鶏ふんなど
堆肥は「植物性堆肥」と「動物性堆肥」の2種類あります。
植物性堆肥には、腐葉土やバーク堆肥、ワラ、もみ殻などがあり、栄養分は少ないですが、土をフカフカにする効果は抜群です。チッソ分が少ないため、肥料を補給する必要があります。
動物性堆肥は、栄養分が豊富なので、逆に肥料は控えめにします。
堆肥の使用量の目安
【畑1㎡あたり】
・植物性堆肥:2~5㎏
・動物性堆肥:0.5~1㎏
上記の量を目安にし、作物に合わせて投入します。
人気の野菜の堆肥の使用の目安はこちらの記事にまとめたのでご覧ください。
(春夏野菜verと秋冬野菜verがあります!)
堆肥について詳しくはこちらの記事にまとめたのでご覧ください。
③石灰資材を入れる
石灰資材とは
石灰資材とは、主に土の酸度(pH)を調整、カルシウムやマグネシウムの補給を目的とした資材です。
日本は、雨が多いため土は酸性に傾きやす傾向があります。野菜は酸度が強すぎる土を嫌うため、アルカリ性の石灰資材を入れて、酸性の土を中和する必要があります。
石灰資材についてはこちらの記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
石灰資材の注意点
石灰資材の注意点は、使い過ぎに気を付けることです。
酸性に傾いた土を中和することは比較的簡単ですが、石灰資材を投入しすぎて、アルカリ性に傾いた土を中和することは、難しいです。また、土がアルカリ性に傾きすぎてしまうと、植物は必要な栄養分を吸収できなくなり、最悪枯れてしまうこともあります。
そのため、pH測定器やpH測定液などを用いて、土の酸度を知ったうえで、石灰資材の投入を検討することが理想です。
石灰資材の使い方
種まきや苗の植え付けの2週間前に行う
石灰資材の中には、堆肥や肥料と間隔を開けずに利用できるものもありますが、化学反応を起こして、ガスが発生したり、熱をもつこともあるため、堆肥と次の肥料まではそれぞれ1週間程度間隔をあけて施すと安心です。
堆肥を施した1週間後、かつ種まきや苗の植え付けの2週間前を目安に石灰資材を適切な量を畑にまいて、軽く土と混ぜておきましょう。
石灰資材によって目安量は変わるので、購入した資材の説明をよく読み、畑に施します。
畑に施した後は、しっかり土と混ぜることがポイント。石灰がかたまっていると、根を傷めてしまう可能性があります。
野菜ごとの適切な土の酸度一覧表
pHについて
・pHは、酸性・中性・アルカリ性を示す値で、化学の分野では7を中性と定義します。
・多くの野菜が育ちやすいpH5.5~7.0ですが、日本の土は雨が多く、酸性雨によって土が酸性に傾きやすい特徴があります。
ほとんどの植物がよく育つ土のpHは、pH5.5〜7.0と言われています。
野菜ごとに適した土のpHを以下の表にまとめています。
pH | 野菜 |
6.5~7.0 微酸性~ 中性 | ・エンドウ ・ホウレンソウ |
6.0~6.5 微酸性 | ・アスパラガス ・インゲン ・エダマメ ・カボチャ ・カリフラワー ・キュウリ ・シュンギク ・スイカ ・スイートコーン ・トマト ・ニラ ・ナス ・ネギ ・ハクサイ ・ピーマン ・メロン ・レタス ・ラッカセイ |
5.5~6.5 弱酸性~ 微酸性 | ・イチゴ ・キャベツ ・コマツナ ・サラダナ ・タマネギ ・ダイコン ・ニンジン |
5.5~6.0 弱酸性 | ・サツマイモ ・ショウガ ・ラッキョウ ・ニンニク ・ジャガイモ |
【野菜の種類別 適した土のpH 】
④肥料を入れる
石灰資材を投入して1週間後が目安
堆肥を入れて土をフカフカにし、土のpHを調整すれば、土づくりは終了しますが、種まきや苗の植え付けの前に作物の初期生育に必要な養分を補うための肥料(元肥:もとごえ)を施しておきます。
堆肥や石灰資材にも養分が含まれていますが、最終的に肥料を施すことで、土の中の養分バランスを整えます。
野菜づくりの場合は、元肥と同時に畝を立てておきます。すると、水はけがよくなったり、作土層が広がるため、根の生育がよくなります。
畝立ての方法については、こちらの記事にまとめたのでご覧ください。
おいしい野菜を育てるためには「土づくり」から
おいしい野菜を育てるためには、「土づくりが大切」ということを、市民農園のスタッフさんにも、ベテランの利用者さんにも教えてもらいました。
初心者の私が1年間畑で野菜を育ててみて、土づくりを一生懸命したときと、そうでない時の野菜の育ちに違いを感じ、改めて土づくりの重要性を身をもって実感しました。
私は、畑の中に、土と同じような色をした「堆肥」を入れる意味も分からないくらい知識がゼロでしたが、1年間でおいしい野菜をたくさん収穫することができました。
土づくりは難しい言葉もありますが、1つずつ勉強をして、おいしい野菜づくりに挑戦してみてください!