家庭菜園をしていると、想像以上に肥料などのランニングコストがかかることに困っている人はいませんか?また、節約目的で野菜づくりをしている人は、できる限りお金をかけずに済む方法があるといいですよね。
この記事では、本来捨ててしまうはずであった、家庭から出た卵の殻を使った手作り肥料の作り方と、その効果や使い方について解説します。
この記事を読むことで、お財布に優しい無料の肥料の作り方が分かり、生ゴミが減ったり、野菜は元気に育つなどの嬉しい効果を知ることができます。
卵の殻の肥料とは
卵の殻の肥料とは、その名の通り、卵の殻を砕いて作った肥料のことです。本来であれば捨ててしまう卵の殻は家庭菜園では貴重な肥料になります。
卵の殻は、卵殻(らんかく)とよばれ、内側には卵殻膜(らんかくまく)という薄い膜がついています。卵殻はおもに炭酸カルシウムが豊富で、卵殻膜にはたんぱく質が豊富に含まれています。
卵殻と卵殻膜は、中身の卵白(白身)と卵黄(黄身)を守る役割があります。また、卵殻は、外部からの力には強く丈夫ですが、内側からは割れやすい構造になっています。そのため、卵自体は割れにくい構造になっていますが、ヒヨコが孵化する時は、内側から割れやすい構造になっています。
たまごの殻の主な成分はカルシウム
たまごの殻の主なカルシウムです。カルシウムは植物にとって欠かせない栄養素です。カルシウムは植物の細胞壁の形成に必須の栄養素であり、不足すると生育不良や病気の原因にもなります。
植物にとってのカルシウムの働き
- 細胞壁を丈夫にして病気や害虫の被害から身を守る
- 光合成をする
- 栄養素を運ぶ
- 根の生育を促す
植物のカルシウムが不足することで生じる問題
- 新芽や根の発育が悪くなる
- 例としてトマトの尻腐れ症や白菜の芯腐れ症がある
卵の殻のその他の成分には窒素・リンなどが含まれる
卵の殻には、カルシウム以外に窒素・リン酸・カリウム・マグネシウムなどを含んでいます。これらの栄養素も植物の生長には欠かせないものです。
これらの栄養素に関しては、こちらの記事に詳しくまとめているので、ご覧ください。
肥料以外の卵の殻の役割「土の酸度調整」
卵の殻は、土の酸度(pH)の調整に役立ちます。日本は降雨量が多く、雨は酸性(酸性雨)なので、雨が降り注ぐ畑の土は酸性に傾きやすい傾向があります。特に、しばらく放置されて雑草が生い茂っている畑では、より土が酸性に傾きやすいと言われています。
しかし、多くの野菜は、pH5.5~7.0の弱酸性から中性の土壌を好みます。卵の殻はアルカリ性であるため、畑の土に入れることで、土が植物に育ちやすい酸度に近づける働きがあります。
日本の土は酸性に傾きやすいけれど、卵の殻はアルカリ性なので、土の酸度を調整する役割があります。
・日本の土は雨の影響で酸性に傾きやすい
・多くの野菜は弱酸性から中性の土を好む
・卵の殻はアルカリ性であるため土を野菜が育ちやすい酸度に調整する働きもある
たまごの殻が家庭菜園におすすめの理由
- 捨ててしまう部分を活用できるので環境に優しい
- 無料で作れるため、お財布に優しい
- 身近なものが肥料になる
- 手軽に作ることができる
卵の殻肥料の作り方
卵の殻肥料の作り方は以下の3ステップで簡単に作ることができます。
- 使い終わった卵の殻を水洗いする
- 卵の殻を干して完全に乾燥させる
- 卵の殻を細かく砕く
ポイントは、卵の殻はしっかり洗ってよく乾燥させることです。この作業をていねいに行わないと、卵の殻に病原菌が付着していた場合、植物に悪影響を及ぼしたり、卵の殻にカビが生える原因となります。
卵を砕くときは、自分の手で砕いたり、フードプロセッサーを利用します。私は、ジップロックに卵の殻を入れて、綿棒を転がして殻を砕きました。手で砕いてもいいのですが、卵の殻の角がジップロックから飛び出して、手にあたってケガをする可能性があるため、手で砕く場合は、十分に注意してください。
また、卵の殻は硬く、自然の力で分解されるのには時間がかかります。肥料の効果を早く効かせたい場合は、卵の殻を細かく砕くといいですが、ザラメの砂糖くらいの大きさで十分です。細かく粉砕すると、土のpHの急激な変化が生じ、野菜の生長に影響を及ぼす可能性があります。
卵の殻肥料の作り方のポイントをまとめます。
・殻についた白身や黄身はしっかり洗い流す
・水洗い後はきちんと乾燥させる
・殻を砕くときがケガに注意する
・卵の殻を細かく砕いた方が肥料としての効きが早い
・細かく砕きすぎた卵の殻は、土のpHが急激に変化する可能性があるため、ザラメの砂糖程度の大きさで利用することが望ましい
卵の殻の肥料の使い方
卵の殻の肥料の使い方と使用量の目安
卵の殻の肥料は、主に2つの使い方があります。野菜を育てている畑の土に砕いた卵の殻を混ぜ込む方法と、植物の根元(土の表面)に撒く方法があります。
植物は根から栄養素を吸収するので、土に混ぜ込んだ方がより肥料の効き目が早く出ます。また、卵の殻は軽いため、風の強い日は、軽く土に混ぜたり、水やりをしてた卵の殻肥料を土に馴染ませることをおすすめします。
卵の殻肥料の使用量の目安は、私の感覚的には、1株に対して卵1個分の殻を、1か月に1回程度のペースで使用することがおすすめです。卵の殻は多くの栄養素を含んでいますが、与え過ぎてしまうと、土の栄養バランスが崩れたり、土をアルカリ性に傾ける性質もあるため、土の酸度が極端に傾いてしまう可能性もあります。
卵の殻肥料は、まずは少量ずつ使ってみて、植物の様子を見ながら追肥するようにしましょう。
卵の殻肥料に適した野菜
卵の殻の肥料はカルシウムを豊富に含んでいるので、特にトマト・ナス・ピーマンなどのカルシウムを多く必要とする野菜に向いています。カルシウムを多く必要とする作物を例として、トマト(尻腐れの予防)、ナス、ピーマン、キャベツ、ほうれん草などがあげられます。
卵の殻には、カルシウム以外の栄養素も含まれているため、例にあげた作物以外に卵の殻肥料を与えても、問題はありません。
卵の殻肥料の注意点のまとめ
- 卵の殻はしっかり洗いよく乾燥させてから利用する→カビが生えるのを防ぐ
- 卵の殻は適度な大きさに砕く→粉砕しすぎると急激に土のpHが変化する可能性がある
- 卵の殻はカルシウムを豊富に含んでいるが、野菜の生長にはその他の栄養素も必要となるため、バランスよく肥料を与える→偏った栄養素をあたえることで土の健康状態も悪くなる
捨ててしまうものを活用できる点では、SDGsにもなります。卵の殻の肥料は、植物が元気に生長するための補助的なものです。日当たりや水はけなど、野菜づくりに大事な基本的な管理も併せて行いましょう。
卵の殻は害虫の予防にも使うことができる
ここまで、卵の殻がもつ栄養分により、野菜づくりの肥料に役立つことをお伝えしましたが、害虫の予防にも利用できるので、その方法をお伝えします。
洗って粗めに砕いた卵の殻を、植物の周辺にまくことで、ナメクジやカタツムリなどの害虫が近づきにくくなります。これは、卵の殻を粗めに砕くことで、殻に複数の角ができ、これを害虫は嫌って近づかなくなります。
卵の殻を肥料として使う場合は、細かく砕くことで、植物が栄養分を吸収するのを早めることができましたが、害虫の予防として利用する場合は、細かすぎると、効果が半減してしまいます。
また、肥料として利用する場合は、土の中に混ぜ込んでも、土の上に置くだけでも利用できましたが、害虫予防の目的で利用する場合は、土に混ぜ込むことは避け、害虫に侵入してほしくない植物を囲うように土の上に卵の殻を置くことがポイントです。
害虫の被害が多くなると、農薬などを使わざるを得ない場合もありますが、卵の殻を活用できれば、化学物質を使わずに済むため、土の環境にも優しい方法で野菜づくりを楽しむことができます。